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出版市場の縮小で苦しむ取次の日販が、これまでにないような書店づくりに力を入れている。放っておけば書店も取次も衰退は免れない。ネット全盛の時代、リアル店舗の意味はどこにあるのだろうか。日本人が失いかけた読書の習慣を、再び呼び覚ますための取り組みが始まっている。
日販グループが手掛ける書店「文喫」は、入場料が必要(右下)。読書や仕事で5~6時間程度過ごす人も多い。混み合わないようにするため、入場規制をかけることもある(写真=的野 弘路)
東京都心の六本木交差点から100mの場所にある「文喫」は入場料を取る珍しい形態の書店だ。平日1500円で土日祝日は1800円。12月初旬の週末に訪れると、20~30代の若者を中心とした入場者が、コーヒーを飲みながら本を読んだり、店内の書籍を参照しながらパソコンで資料作りをしたりしていた。図書館か勉強スペースのようにもみえるが、退場時には多くの人が何冊もの本を購入していく。
店内には、90席ほどの座席と机を置き、軽食を購入して食べながら読書をすることもできる。1冊3万~4万円するような海外の写真集など珍しい本も含め、国内外3万冊の本を集めている。
本の検索機は置かず、隣り合う本が何らかの関係があればよいという緩いルールを定めて陳列している。20代のウェブデザイナーの女性は「いろんな写真集が見られて仕事に役立つ。今日、初めて入ってみたが、居心地がいいので、これから定期的に来たい」と話していた。
この異色の書店がヒットしている。一定の人数を超えると入場制限をかけるため週末は1時間待ちも珍しくない。開店は昨年12月で、既に店舗の採算は単月黒字になっている。手掛けるのは出版取次最大手、日販グループホールディングス。事業子会社である日本出版販売のリノベーション推進部、武田建悟氏は、「本や書店の可能性はまだある。新しい形の書店を示そうと思った」と話す。
出版社と書店、間に入って書籍を卸す出版取次の苦境が続いている。よく指摘される書店の販売額は2018年に9400億円とピークの1996年に比べ半分に減った。しかし、アマゾン・ドット・コムなどインターネット経由での販売額も2000億円余り。タブレットなどで見る電子出版物も市場規模は3000億円程度だ。差し引き4000億円の市場が消えた計算になる。スマートフォンの浸透で若年層だけでなくシニアも読書から遠ざかった。ネット販売や電子出版物に需要が移っていること以上に読書離れが深刻になっている。
日販は出版社から本を仕入れ、書店に運ぶ。他業界でいう「卸」や「問屋」の役割だが、市場縮小で連結業績は厳しい。2019年3月期の売上高は5457億円で前の期比で6%減。5期前に比べると1360億円も減っている。19年3月期は営業利益も10億円と同57%減った。赤字店舗の減損損失などで最終損益は2億円の赤字に転落している。
この間の日販は防戦一方だった。取次ビジネスは2位のトーハンとの寡占で、かつては安定事業だったが、近年は右肩下がり。市場が縮小するだけでなく、アマゾンが取次を通さずに出版社から直接仕入れる動きも出始めた。
取次に次ぐ部門である小売りでは、書店のM&A(合併・買収)をいくつも仕掛けた。03年にパルコ子会社の書店、リブロの発行済み株式の90%を取得。13年に「PAPER WALL」や「オリオン書房」を手掛ける万田商事、15年にはあゆみBooksを傘下に収めている。
いずれも市場縮小で苦しくなる書店を救済した形だ。18年にはこれら3社が合併し、新会社「リブロプラス」を設立した。卸先となる客を守るために買収せざるを得ない日販側の事情もあったと業界では受け止められている。
反転の手段が見つからないなか、15年4月、何かを変えようと立ち上げたのがリノベーション推進部。売れる書店をつくり、書籍市場を再び掘り起こすための組織で、後に文喫を手掛けることになる。
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December 19, 2019 at 10:00PM
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