書籍離れが以前から指摘されていますが、20代以上の約半数が1カ月の間に紙の本をまったく読んでいないということが明らかとなりました。書籍市場は長期にわたって縮小が続いていますが、日本の出版業界は大丈夫なのでしょうか。
急激に縮小する紙書籍市場 電子書籍増加も追いつかず
国立青少年教育振興機構が、全国の20~60代の男女5000人を対象に行った調査によると、全年代の合計で、1カ月の間にまったく紙の本を読まなかった人は49.8%に上りました。2013年に行われた同様の調査では28.1%でしたから、紙の本を読まない人が大幅に増えた形です。特に若い世代の本離れが著しく、20代では、全く本を読まない人の比率が2013年との比較で倍増しています。
一方で、スマホやタブレットを用いて本を読む人は増えています。1カ月の間に1冊以上の電子書籍を読む人の割合は2013年には8.5%でしたが、2019年は19.7%と倍増しました。
電子書籍での読書が増えれば、出版業界も何とかやっていけるはずですが、現実はそう甘くはないようです。出版科学研究所の調べによると、2018年における出版市場規模は1兆5400億円となっており、前年比で3.2%の減少となりました。電子出版の市場は拡大していますが、金額ベースで全体の16%しかなく、紙の書籍市場の急激な縮小に電子書籍の増加が追いついていません。
本を買う余裕がない人が増えた?
紙の書籍市場が縮小する中で、電子出版がそれをカバーする水準まで伸びない理由ははっきりしていませんが、米国市場の状況を見ると多少のヒントにはなりそうです。
2017年における米国の書籍市場(電子書籍含む)は約368億ドル(約4兆円)ですが、2013年から2017年にかけて、米国の書籍市場は5.8%も拡大しました。米国の市場拡大も電子書籍が牽引役ですが、紙の書籍も横ばいと健闘しており、日本のような急速な市場縮小は見られません。
日本の場合、米国と比較すると平均賃金が40%も低いという状況であり、物価の上昇から実質賃金は低下する一方となっています。電子書籍の市場が伸びていることを考えると、著しい書籍離れが起きているのではなく、本を買いたくても本を買えない人が増えたと解釈した方が自然でしょう。
実際、SNSでの消費者の発言を見ると、メルカリで本を買うなど、中古本を買うことが大前提になっている人が少なくありません。こうした基礎的な経済状況が出版不況の大きな理由であるとすると、若者の書籍離れをどれだけ嘆いたところで問題は解決しないことになります。
(The Capital Tribune Japan)
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