
大きな物語と小さな私
家にこんなにいることもないのだから、大長編に挑戦しよう。または、クラシックを改めて読みたい。そう思う方は多いと思う。かくいう私もその一人だ。
『源氏物語』『大いなる遺産』『八月の光』は、私が住んでいる街が非常事態宣言下になってから、実際に読み始めた本(もちろん今まだ途中)。なんていうか、とても広くて、大きな物語だと思う。確かな筆力が、濃密な言葉たちが、「私」をあっという間にその広さの向こうまで引っ張って行ってくれる。どこまでも行ける。
そんなふうに拡大してゆく「私」の視界を、一気に狭めてくれるのが『新しい目の旅立ち』と『蕎麦湯が来ない』だ。前者3冊の合間に、後者の2冊を読んでいる。マクロからミクロに瞬時に移動しているような気分だ。「私」を内側から観察させてくれる。とても仔細に、とても丁寧に、そしてユーモアたっぷりに。
でも、そうしているうち、いつの間にかまた、広い場所に出ている。5冊それぞれは全く違う本なのに、長くて短い1冊を読んだような気持ちだ。
きっと、「大きな物語」と「小さな私」は繋がっているからだろう。私たちは、そして私たちの物語は、長くて、短くて、大きくて、小さいのだ。
西加奈子(にし かなこ)
PROFILE
1977年、イランのテヘラン生れ。エジプトのカイロ、大阪で育つ。2004年に『あおい』でデビュー。翌年、1 匹の犬と5人の家族の暮らしを描いた『さくら』を発表、ベストセラーに。2007年『通天閣』で織田作之助賞、2013年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞受賞。2015年、『サラバ!』で直木三十五賞を受賞。その他の作品に『窓の魚』『きいろいゾウ』『うつくしい人』『きりこについて』『炎上する君』『円卓』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』などがある。
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April 23, 2020 at 06:10PM
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作家・西加奈子が選ぶ「いまこそ読みたい本5冊」 - GQ JAPAN
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