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母親が読むべきビジネス本を誰か私に教えて下さい|子供がずっと欲しかった|はあちゅう - gentosha.jp

ビジネス本や自己啓発本が大好きな私が
妊娠中から産後にかけて、
めっきりそういうものを読まなくなった。

出来れば多動になりたいし、
アイディアは移動距離に比例すると信じている。
自分でも何冊もそういう類の本を書いているし、
読めばそれなりに楽しめる。

だけど、そういった本を読んで
今、どうしても頭に浮かんでしまうのは、
「これ、子育てしながら出来るの…?」
という大いなる疑問。

男性経営者が書いたどんな成功本を読んでも、育児と
どう両立するかという肝心なことが書いていないのはなぜ?

たまに「妻には苦労をかけた」みたいな記述があり
「妻が書いた本ないかな…」と
思うけれど、ないんですよね。

妊娠中や産後すぐの体の不調とどう向き合うか、
その間、仕事をどうするのか。
産後はいつまでお休みして状況はどう変わったのか。
そんなことを事細かく書いているビジネス本にまだ出会っていない。

ここで私の頭に思い浮かぶのは、
全ての成功者の圧倒的な仕事は、
育児丸投げ、あるいは独身だからこそ
成り立っているのでは…!? という考え。

誰かの生き方を否定したいわけでも喧嘩したいわけでもなく、
ビジネス本ランキングに、
私の知りたいことが書かれている本が見当たらないのは、
単純に困る。

育児と効率をかけ合わせた本となると、
主婦兼モデルのインスタグラマーさんが出している
写真たっぷりのライフスタイル本になってしまう。

それはそれで大好きだけど、
これらの本の中で登場する「効率」といえば仕事ではなく家事・美容。
時短のおかずとメイクと収納法はわかったけど、
「仕事」は…仕事はみんなどうしてるの…!!!?
ミルク、オムツ、離乳食、寝かしつけ、入浴、買い出し、
子供にまつわる各種行事や手続き、育児のためのいろいろなリサーチ……
その合間に一体どうやってデスクワークを…⁉

妊娠・出産を機に人生が変わる人は多いだろうけど
私も例外ではなく、世の中を見る目も人を見る基準も
自分自身に課す課題もだいぶ変わってしまった。

男性の起業家たちが深夜に楽しそうに集っている写真を見るだけで
「この人、家事はしてるのかな…この時間は奥さんが子供みてるのかな…」
なんて思ってしまう自分が嫌で、ダークな気持ちを持たないために、
SNSも以前より見なくなった。

今まで一緒にイベントに登壇し、
肩を並べて仕事をしていると思っていた男性たちが、
急に、私とは違う性を持った生き物である現実を突きつけられた気がする。
妊娠中に断らざるをえなかった仕事が、
以前一緒に仕事をした男性に回ったのを見て、
悔しくないといったら嘘になる。

「子供を授かる喜びを考えればそれくらい」と言われるかも知れないけれど
男性は、仕事や体を女性ほど犠牲にすること無く父親になれるのに、
女性は犠牲を払うことが当たり前になっているどころか、
それが美しいことや母であることの証だと周囲から洗脳され、
愚痴をいうことすら憚られるなんて、呪いだとしか思えない。

子供も欲しいし、仕事もしたい。
そんな、男性には当たり前に許されていることを
女性が口にしたら贅沢だと同性からも異性からも責められるなんて、不公平だ。

子供は想像を遥かに超えて可愛く、目の前の日々も
これからの子育ても楽しみでしょうがないけれど、
子供といると確実に仕事の時間は削られる。

聞きしに勝る自由時間の無さ。睡眠時間の欠如。減っていく収入と人付き合い。
うちは、家で仕事をする私が育児の主導権を必然的に担うことになる。
その分、夫が金銭的負担を多めに背負ってくれてはいるものの、
男性のほうが女性よりも「我慢」の機会は少ない。
もちろん、例外はあると思うが、
私が個人的にそう思っているわけではなく、世の中一般がそうなっているはずだ。


「どうしたらいいの…?」と突き詰めていった先で
藁をも掴む思いで掴んだのが
フェミニズム本、パートナーシップ本、育児エッセイ。
これらを読み漁り、日々自分が抱える葛藤や課題が
言語化されているのを見つけては、溜飲を下げ、活力を貰っている。
それでもやっぱり、不公平感は拭えない。

私のSNSには「無痛分娩を選ぶなんて愛情不足」
「母親ならこうあるべき、こうすべき」「裁縫くらい出来ないとダメ」
「子供がいるのにSNSをやる時間があるんですね」「家事代行なんて甘えている」
と時代錯誤なコメントが男性からも女性からもつく。

その異常性を指摘してくれる人もいるけれど、
本気でそういう価値観で生きている人が大勢いるから、
そんなコメントがつくんだろう。
なぜか同じ日に「父親」になったはずの旦那のSNSには
父親としての自覚うんぬんのコメントは来ない。この偏りは一体なんなのか。

これまでの人生でも、女性としての生きづらさは感じていたけれど、
妊娠・出産してからはそれがより強まった気がする。

日々感じる「なんで私ばかり」という苦味のほとんどが
「なんで女性だけが」に通ずる問題だ。
私個人の問題ではなく「女性」という性別にまとわりつく
この理不尽さをなんとか解決したくて、時間をみつけて
(背中に息子を背負いながら)本を読んでいる。

今は目の前のことにいっぱいいっぱいで、知識を深めることくらいしか
出来ないけれど、おかしなことには「おかしい」と声を上げ、
理不尽を可視化し、解決策を探りたい。

そして、もっと平等な社会を息子世代に手渡したい。
これも子供が生まれてからの変化だけど、
社会問題をより自分ごととして受け止められるようになったし、
より遠い未来を意識出来るようになった。

100年後、私は死んでいるけれど、
息子は生きているかもしれない。
今までは漠然としていた「次の世代」という言葉が
「息子の世代」だと思うと、途端に身近になったのだ。

女だけが苦しいわけではなく
男性にだって生きづらさはあるだろう。
おかしいと思うことには、みんながどんどん声を上げればいい。

女性として感じるのは生きづらさだけではなく、良い面もある。
妊娠・出産自体だって、仕事も人付き合いも含めて
人生を丸ごと見直さざるをえなかったとはいえ、
自分の体に起こる変化は、「好奇心」というフィルターをかけてみれば
面白かったし、子育ての苦労や「ママあるある」を分かち合える友人たちとの
絆は深くなった。

人生のステージが変わるごとに見える景色は変わる。
それに伴って、考え方や感じ方だって変わる。
変化の時期に、私が道標にしているのは本だ。
私は今、自分が読むべき本を知りたい。

新刊『子供がずっと欲しかった』には、
妊娠前から産後にかけての
苦しいことも、楽しいことも、思いつく限り全部書いた。
同じステージにいる人にも、違うステージにいる人にも
きっと楽しんでもらえる内容だと思う。

冒頭に書いた「子育てしながら仕事…どうすればいいの?」
という疑問はまだ解決していないので
これから自分なりの答えを探しながら
過程を発信し続け、また何かの形で発表したいと思う。
 

* * *

ブロガーの妻、AV男優の夫。事実婚のまま、家族を作るのだ――。
「人生全部コンテンツ」を実践。その生きざまを赤裸々に綴る。
『子供がずっと欲しかった 事実婚妻が体験した妊娠・出産のこと、全部。』
はあちゅう・著
幻冬舎・刊
1300円+税
4月16日発売

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