
米紙ニューヨーク・タイムズは9月27日、トランプ氏が長年、所得税を納めていないことを報じた。同紙の調査によると、トランプ氏は2016年に大統領に当選する前の15年間で、10年分の所得税を連邦政府に納めていなかったという。当選した年と就任1年目の2017年に収めた所得税額も、それぞれ750ドル(約8万円)に過ぎないと同紙は指摘する。トランプ氏はこれについて「フェイクニュースだ」と真っ向から否定したが、自身が納税記録の開示を拒否してきた経緯もあり、それだけで疑念が晴れたわけではない。 それに先立つ同24日には、トランプ氏の姪で一族についての“内部告発本”を出版したばかりのメアリー・トランプ氏が、叔父のトランプ氏や伯母のマリアン氏らを相手取り、ニューヨーク州の裁判所に訴訟を起こした。 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、メアリー氏はこの提訴で数千万ドル(数十億円)規模の損害賠償を求めているという。メアリー氏自身が亡き父(トランプ氏の兄のフレッド・ジュニア氏。1981年死去)を経由して受け継ぐはずだった祖父の遺産の取り分を、トランプ氏や伯母らに長年にわたり騙し取られたと主張している。 その経緯は、日本語訳版が出たばかりのメアリー氏の著書『世界で最も危険な男』に詳しく書かれている。
20年前の遺産相続トラブル
同書によると、ことの発端は、メアリー氏の祖父(トランプ兄弟の父)で米ニューヨークの不動産王として知られたフレッド・トランプが、資産を子供らに渡すために施した“仕掛け”にあるという。
〈祖父は子どもたちに利益を落とすために、1960年代にミッドランド・アソシエイツ社を創立し、子ども一人につき、〈サニーサイド・タワーズ〉を含む8棟の建物の15パーセントの所有権を与えた。完全な詐欺とまではいえないにしても、明らかに違法な資産譲渡だ。その目的は、正式な譲渡で課せられるはずの贈与税の大半を免れることだった〉(メアリー・トランプ『世界で最も危険な男』より) 1999年に祖父フレッドが亡くなると、メアリー氏とその兄フリッツは、叔父たちから「祖父の遺言書にサインするようにと求められた」という。しかしそれは、孫であるメアリー氏と兄にとって見過ごせない内容だった。 〈私と兄は、本来権利があるはずの相続権を奪われた。祖父は、父が生きていたら受け取れたであろう20パーセントの取り分を孫である私と兄に分配するのではなく、生きている4人の子どもたちに平等に分けてしまったのだ。孫に遺された遺産は私たちに分配されたが、それは叔父や伯母たちが相続した遺産に比べれば微々たるものだった。祖父の遺産全体から見ればきわめて少額だったために、私とフリッツには異議を唱える権利があった〉(同前) 当時、メアリー氏が直接やりとりしたのは、トランプ氏の弟でメアリー氏の叔父にあたるロバート・トランプ氏(今年8月に死去)だった。彼らとメアリー氏側の話し合いは平行線のまま進み、メアリー氏とその兄フリッツは、祖父の遺言書の無効を訴えて訴訟を起こすことを決める。すると、相手方である叔父や伯母マリアン(トランプ氏の長姉。元第3巡回区合衆国控訴裁判所裁判官)たちから、思いもよらぬ仕打ちを受けた。 〈生まれてからずっとトランプ・マネジメント社によってかけられてきた私たちの医療保険(トランプ家の一族は全員これによって医療費を保証されていた)が解約されていた。兄は息子ウィリアムの払いきれないほど高額な医療費の支払いをこの保険に頼ってきた〉 〈私たちの医療保険を無効にするというのはマリアンの考えだったが、それによって彼らが得をするわけではない。ただ、私たちにより多くの痛みを与え、精神的に追い込もうとする作戦だった。そのころにはウィリアムも退院していたが、それでもまだ発作を起こしやすいことに変わりはなかった。心拍停止状態になり心肺蘇生法でかろうじて助かるということもあったほどだ。ウィリアムにはいまも24時間体制の看護が必要なのだ〉(同前)
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September 30, 2020 at 05:05AM
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