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移動革命「空飛ぶクルマ」の現在地 - NHK NEWS WEB

移動革命「空飛ぶクルマ」の現在地

「自由に空を飛んでみたい」
誰でも一度は、夢見たことがあるのではないでしょうか。機体に取り付けられたプロペラを使ってドローンのように離着陸する「空飛ぶクルマ」。その開発を進めるベンチャー企業が、有人での飛行試験に成功し、先月25日、その様子を報道陣に公開しました。「空飛ぶクルマ」は、どこまで実用化に近づいているのか。実際に飛行試験の様子を取材してきました。(名古屋放送局記者 篠田彩)

鎌倉から六本木まで25分?

午前8時半。眠りから覚めて、素早く着替えを済ませ、鎌倉にある自宅を出る男性。駐車場に止めてある「空飛ぶクルマ」に乗り込み、自宅近くの広場から空へ。

25分ほどで六本木の会社に到着し、いつも通りに午前9時からの会議に出席するー。

トヨタ自動車の出身者が立ち上げたベンチャー企業、「SkyDrive」のPRビデオには、SF映画のワンシーンのような光景が描かれています。

この夢のような未来を実現しようと、この企業では、「空飛ぶクルマ」の開発を急ピッチで進めてきました。

開発する機体は、全長4メートル、幅3.5メートル、高さ1.5メートルほど。車2台分の駐車スペースに収まる大きさで、機体の四隅には8枚のプロペラがついています。

前後左右に移動が可能で、将来的には、時速100キロ、20分から30分ほどの航続時間を目指しています。

初公開!有人飛行試験

先月25日、愛知県豊田市で、この企業が開発した空飛ぶクルマの有人飛行試験が公開されました。

パイロットが乗り込むと、プロペラが回り出し、2メートルほど浮上。高度を保ちながら、時速4キロの速さで試験場を1周し、元の場所に戻りました。

飛行中、機体は非常に安定していて、プロペラが回る音や風圧はあったものの、ヘリコプターというよりは、大型のドローンという印象でした。

実際に乗った人は、「低空での安定性は高く、乗用車で一般道を走っているような乗り心地だ。少し音がする程度のスポーツカーに乗ったような感じだ」と話していました。

私も着陸した状態の機体に乗ってみました。

座席は足を伸ばせるくらい広く、正面には立体的に浮かび上がるディスプレイが備え付けられています。行き先を入力したり、地上を含めた周りの景色を確かめたりすることができます。

コックピットは航空機のような複雑なものではなく、シンプルな作り。自動運転で誰でも乗ることができる機体を目指して、開発が進められていることを実感しました。

有人飛行を成功させた「SkyDrive」の福澤知浩代表取締役は、意気込みを語りました。

「どんな感じで生活や移動手段が変化していくのかを実感してもらえたと思う。実用化に向けては主に2つのステップがあり、1つめは安定して有人で飛ばすこと。それは今回、達成できた。次のステップは、一般の方が乗ることができることであり、空飛ぶクルマが当たり前に普及するような世界を作りたい」

熾烈極める開発競争

おととし官民が設置した協議会は、「空飛ぶクルマ」の特徴について、1.電動、2.自動運転、3.垂直に離着陸、といった点を挙げています。エンジンを持つ車などと比べて部品点数が少なく、整備が低コストで、パイロットはいらず、滑走路も必要ありません。

人々の移動範囲を飛躍的に広げ、交通渋滞の解消や物流サービスの効率化などにつながることから、「空の移動革命」とも呼ばれています。

2040年には、世界の市場規模が150兆円を超えるという予想もあり、熾烈な開発競争が繰り広げられています。

国内では「川崎重工業」が機体、「NEC」が運航システムの開発を進め、「ANAホールディングス」「日本航空」も「空飛ぶクルマ」の運航サービスを検討しています。

アメリカではライドシェア大手の「ウーバー」が「空のタクシー」という構想を打ち出しているほか、ドイツのベンチャー企業は去年秋にシンガポールで有人の飛行試験に成功。ドローンを開発している中国のベンチャー企業「イーハン」もすでに有人の飛行実験を行っています。

「SkyDrive」では、2023年度に大阪で5キロから10キロの区間を飛ぶ「エアタクシー」のサービス開始を目指しているほか、2026年度には、東京や大阪の湾岸エリアを中心に、20キロから30キロの距離を飛行するサービスを始める計画です。

さらに2028年度からは自動運転の空飛ぶクルマの実用化を目指すとしています。

実用化までの課題は?

ただ、実用化に向けては、課題も少なくありません。

まず、なんといっても安全性の担保です。そのためには、航空機と同様に、安全性を証明する国の認証が必要ですが、「空飛ぶクルマ」には、航空機のような既存データがありません。何をもって「安全」とするのか、国や企業、専門家も交えて議論を急ぎ、制度を作る必要があります。

また、飛ぶ空域はどこになるのか。さらには、航続距離を延ばすためのバッテリーの開発、離発着する拠点や充電ステーションといったインフラの整備も欠かせません。

「SkyDrive」の最高技術責任者、岸信夫さんは次のように話しています。

「まだ開発の3分の1くらいだ。技術的なめどはついてきたが、今後は、具体的な飛行用途にあわせた新たな試験機を開発し、前例のない審査にクリアするハードルが残っている。機体を作るだけでなく、運航サービス含めると、将来は自動車に匹敵する産業になるので、安全・安心をきっちりと担保した上で、国をあげて、われわれが新しい産業革命のきっかけになればいいなと思っている」

なるか空の移動革命

空飛ぶクルマは、都市部などでの移動時間の短縮だけでなく、災害時の人命救助や物資輸送、それに交通が不便な離島や過疎地などでの移動手段としても期待されていて、多くの社会的な課題を解決できる可能性を秘めています。

新しいサービスや産業が生まれることも予想される「空の移動革命」。

飛行試験の取材を通じて、まだまだ先だと思っていた未来も、実はそう遠くないのかもしれないと感じました。官民が緊密に連携しながら、多くのハードルを乗り越えて、早期の実現に向けて進むことを期待したいと思います。

名古屋放送局記者
篠田彩
平成26年入局。福井局を経て、現在、名古屋局で製造業や流通などの経済取材を担当。

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September 04, 2020 at 05:58PM
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