私は昭和35年の日本宣伝美術会(日宣美)の公募展に応募するために適切な題名の本を探していた。そこで東京・本郷の書店で見つけたのが、ピエール・クロソウスキーの『ロベルトは今夜』であった。
読んでみると日本人では書けないような細密描写の、24歳の私からすると想像を絶する強烈なポルノグラフィーに思われる内容だった。もちろんそこには私には謎でしかないキリスト教神学の難解な教義がちりばめられて特異なエキゾチックでもある雰囲気を醸し出していた。
例えば主人公の女性代議士、ロベルトが国会が開かれている時間帯に、地下道で2人の靴磨きの少年に襲われて陶然となる場面は、どの少年の手がロベルトの下着のどの辺りに来ているのか、寸秒単位の時間描写を追って私はその光景を絵にしようと試みたけれど、ラビリンスにはまり込んだようにその光景をついに絵にできないのであった。
しかし、その懐中電灯の光で浮かび上がる光景は下からの垂直の視点で捉えられていた。それが絵にできたとしても、その絵を日宣美に出せなかったから応募作品のテーマとしては不向きだった。その年、私はサマセット・モームの『人間の絆』をポスターにして日宣美に入選したのだった。
当時読んだ『ロベルトは今夜』の表紙は宇野亜喜良氏が担当し、指から木の枝が伸びたようなシュールで幻想的なイラストで飾っていた。一方、挿絵は当時のアートの流行とは外れる、むしろ幼稚とも見える絵であったが、そこからは紛れもない芸術の香気が漂っていた。実は、その絵の画家がクロソウスキー自身であったのを知ったのはずっと後のことであった。
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February 02, 2020 at 07:17AM
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