惰性的配本システム、その流通に乗るヘイト本
本屋に最後に行ったのはいつだろうか? 本屋で何かを「探す」という行動をとったのはいつだろうか? よくする人も、全くしないという人もいるだろう。永江朗『私は本屋が好きでした』(太郎次郎社エディタス)は、「出版業界や本屋にとってヘイト本とは何か?」という観点から、出版業界の制度疲労しつつあるシステムを浮き彫りにする。
本書は書籍輸入販売会社・編集者を経てライター専業となった著者が、2015年から2016年にかけて出版業界関係者や書店員に取材を行った上で、変わりゆく本屋を取り巻く状況を目の当たりにしながら2019年12月に出版した一冊だ。
「ヘイト本」とは、政府(政治家)や企業(経営者)といった公的な存在を批判する本ではない。「○○をする××人は酷い、劣っている」といったイメージを植え付け、特定集団への差別心を煽るようなタイトル・内容の本のことだ。内容を読むと政府批判寄りでヘイトスピーチと断言しづらい本でも、結局のところはタイトル部分で「それを支持する××人は酷い、劣っている」というイメージを植え付ける巧妙な本も多く、だからこそ「差別を(助長するのは)やめろ」という声に対して「政府批判もヘイトなのか!」などと的外れな反論をする人も増えている。
本書によると、ヘイト本のはじまりと言われているのは2005年に刊行された山野車輪『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)というムックで、発行部数は公称100万部。2010年代に入るとムックから書籍にシフトし、2013年の室屋克実『悪韓論』(新潮新書)・『呆韓論』(産経出版社)などが出て、「嫌韓反中本」と呼ばれるような一定のジャンルとして確立していくが、2015年頃に流行は陰りを見せる。その後、2017年のケント・ギルバート『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社+アルファ新書)や百田尚樹『今こそ、韓国に謝ろう』(飛鳥新社)で息を吹き返したとまとめられている。
こうしてタイトルを列挙すると「確かにそんな本を見かけた記憶がある」という人もいるかもしれない。なぜいつの間にかこうした本たちが書店の目立つ位置に並ぶようになってしまったのか。まず、一般的な本屋の配本システムの基本知識をいくつかご紹介しよう。
・配本は店舗スタッフによってではなく、取次(出版社と店舗の仲介)によって決められる。通称「見計らい配本」
・大きな本屋優先で配本が行われ、大きな本屋は配本数や配本される本の種類が多い。そのため、発行部数の少ない本は、注文しない限り小さな本屋に配本されない
・本は基本的に返品でき、返品できない商品は「買い切り」(店舗サイドが買い取り)となる。「買い切り」システムを採用している代表的な出版社は岩波書店
「出版社は本をつくって(取次を介して)本屋に納品すると(エンドユーザーである読者にはまだ買われていないにもかかわらず)、本屋から代金が支払われます。本屋は(一定の条件内であれば)返品できるので、確実に売れるか売れないかわからない本でもとりあえず仕入れるし、ちょっと置いてみて売れそうになかったら返品します。」(P20-P21)
書名が示す通り、「本屋が好きだった」著者は、本が大好きで出版業界で働くようになり、現在の著述家という職業に至っている。「本屋が好きだった」というのは単なる過去形ではなく、現職に就いたきっかけを示す一文であり、「本が好き」であることは著者にとって現在進行形の想いでもある。
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February 17, 2020 at 05:00AM
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「中韓へのヘイト本」はなぜ本屋に置かれるのか。出版社・取次・書店を取り巻く複雑に絡み合った業界構造を考える 【永江朗『私は本屋が好きでした』(太郎次郎社エディタス)】(FINDERS) - Yahoo!ニュース
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