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【高論卓説】1冊の本が蘇らせた子供たちの笑顔 - SankeiBiz

 先日、出版社の編集者をインタビューさせていただいた。そこで本は読んで終わりの一方向ではなく、双方でつながれるツールなのだと知った。時代は「何を」から「何のために」に変化している。つまり、何をするのかではなく、何のためにそれをするのかである。理念やビジョンが浸透している会社は、何のためにその活動をするのかが明確だ。(芝蘭友)

 さて、筆者がインタビューさせてもらった編集者がある作家と本づくりをしたいと持ちかけた。

 しかし最初は難航したそうである。作家が「何のために本を書くのか」の理由が見えなかったからである。既に執筆した本に全て大切なメッセージをこめて書いた。いまさらまた次の本を書く意味がどこにあるのか分からないと。筆者はそれを聞いたときに、そんな作家がいるのかと正直驚いた。通常なら、編集者から「本を書いてください」と頼まれたら浮足立ってしまうものである。

 その先生は「この本を書く意味は何なのか」「伝えたいことはこれまでの本で伝えた」と答える。「何のために」という意味を編集者に問うた。そして、編集者はその問いを持ち帰ることになる。電話でやりとりをするも、企画が進むこともなく1年は過ぎてしまったそうである。

 ある時、その出版社でお世話になっている他の先生たちの印税の使い道を話したときに、一気に話が前に進んだ。例えば、居酒屋チェーン・ワタミ創業者の渡辺美樹氏はカンボジアに学校を作り寄付をしている。そのような形で印税を使うような先生たちも増えていると編集者が伝えると、「印税は全部寄付をしたい。そのような形にできるのであれば、また本を出す意味が見えた」と言ってくれたそうである。となれば、次は、どこの誰のために寄付をするかということになる。

 当時、東日本大震災の後で被災した子供たちも多く、笑顔が消えていた。なんとかその子供たちの力になりたいということでディズニーランドへ招待するということで印税の使い道も決まった。そうやってできた本が10万部を突破した『ディズニーランドであった心温まる物語』(あさ出版)である。書店員さんたちもその取り組みを応援してくれたという。そして、大勢の人がその取り組みに協力していくようになった。

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March 04, 2020 at 03:00AM
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