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7年10か月ぶりにミニアルバム「せめて空を」をリリースした釘宮理恵、テーマは「何ものも表現しないこと」(超!アニメディア) - Yahoo!ニュース

 7年10か月ぶりにミニアルバム「せめて空を」をリリースする釘宮理恵。超!アニメディアでは、本ミニアルバムに込められた思いなどについて、本人にじっくりとお話をうかがった。

ミニアルバムのテーマは何ものも表現しないこと

――個人名義でのCDリリースは、なんと7年10か月ぶりとのことです。

 実は、制作のスタートは2012年にリリースしたミニアルバム「kokohadoko」の制作が終わったすぐあとで、「PREMIE」だけはレコーディングをしていたんです。ただ、制作チームのスタッフさんの異動もあったりして、ある程度月日が経ってから改めて楽曲制作の話し合いがあり、そしてまたイチからお話し合いがスタートし、いい作品を作るためにディスカッションを重ねていくうちに時間がたってしまい……。ただ、色々な意見が出たおかげで次第に方向性も見えてき始め、1曲1曲に対して妥協しないで音楽制作をさせていただき、全員が納得するものに仕上がったと思います。

――釘宮さん自身は、音楽活動にどういうスタンスで臨んでいますか?

 アニメやゲームなどの作品に声優として出演させていただくときは、その作品やキャラクターの色に染まりたい、作品全体のひとつのパーツになりたいという思いです。でも、音楽はパーソナルな部分が大事なのかなと感じていて。私自身は、「私の表現したいものを聞いてください」という熱量はあまりないんですね。それよりも、作品を通じて私自身を応援してくださっている方に感謝の気持ちを伝えたり、「最近どうですか?」と私信をやりとりしたりするような、距離の近いツールとして音楽活動を捉えています。なので、自分の気持ちを伝える……伝えるまでいかなくても、聞きたいときにそばにあるという形になったらいいなと思って。今回も、メロディーや歌詞が濃くなり過ぎない曲を選ばせていただきました。

――今回のミニアルバムは全6曲収録です。釘宮さんから曲のテーマやジャンルはオーダーしましたか?

 ワルツのイメージが自分の中に強くあったので、三拍子は取り入れてもらっています。それ以外は、「何ものも表現したくないんです」というお願いをしました。恋愛ソングや応援ソングは、状況が限られてしまうので、わかりやすいメッセージ性のある曲はあまりやりたくなかったんです。

――歌は表現方法のひとつですが、「表現したくない」と思っているというのは意外でした。

 川のせせらぎみたいな環境音楽が好きなので、歌もそれに近いものがいいなと思って。適度に気持ちがよく、元気なときに聞けば素敵に、落ち込んでいるときに聞いたらもう少し頑張ろうと思えるような、圧のかからないものがいいなと。その結果が、「何ものも表現したくない」ということなんです。

――実際できあがった曲は、6曲ともやさしいメロディーですよね。

 できる限りしゃべっている声で歌いたいと思っていたので、声を張らないように心がけました。熱すぎず、冷たすぎずというイメージですね。ただ、声を張る場合はコンディションがよくなくてもごまかせるんですが、しゃべるような声だとそれができなくて。バランスの調整が難しかったです。

――「PREMIE」は、録り直しをされていないんですか?

 ミックスだけ変えていただきましたが、当時録ったそのままです。「PREMIE」は前作がおとぎ話のような1枚になったので、もう少し現代的な温度感のある曲を目指しました。この曲は、歌詞とメロディーがツボだったんです。「曇り空の晴れ間」や「朝と夜の隙間」のようなワードが好きで。表現したくはないけれど、その一瞬は表現したいという思いを持ってレコーディングしたことを覚えています。

――2曲目の「Jelly fish」はたゆたうような印象です。

「私、クラゲが大好きなんです」というお話しをしたのですが、そのふわっとしたところで作ってくださいました。この曲は、”ハモ”にこだわりました。一度、レコーディングをしたのですが、どうしてもしっくりこなくて全部録り直したんです。ディレクターの方は、ちょっと”ハモ”が強めだったり、ピアノが主張をしてしまっていたり、そのエモーショナルな部分が引っかかっていたんじゃないかとおっしゃってくださいました。

――どうしてもしっくりこないときは、どのように対応していくのでしょうか?

 音楽知識がないので、一度レコーディングしたものを持ち帰って、まず何度も聞き返すんです。ただ、聞くタイミングによって、聞こえ方ってすごく変わるんですよね。前日いいと思っていたものが、翌日は全部引っかかる……みたいなこともあって。それで何日か寝かせてまた聞いて、ピンとこない部分を絞っていきました。ものすごく制作に時間がかかる理由もそこにあるのかもしれません。

――3曲目の「vilenmua」。タイトルは作詞を担当されたriyaさんの造語だそうですね。

 そうですね。光と何かを合わせたような、そんな意味合いでした。この曲はほかの曲がある程度できあがってきてから作ったのですが、全体がさすがにゆったりしすぎなので、もう少し元気な曲もあったほうがいいだろうというコンセプトで選んだ曲です。イントロから賑やかに作っていただいたんですが、いかんせん歌うのが私の声なので、ふわっと始まってしまって(笑)。
 ただ、オケがテンポ感を作ってくれているので、スピード感や躍動感は感じていただけると思います。私は、イントロの部分からサンタさんがソリに乗ってやってくるイメージを持っていましたが、聞く人によってきっといろいろな光景が見えてくる曲だろうなとも感じています。

――4曲目は「記憶メヌエット」。

 この曲は、デビュー当時からキャラクターソングでもお世話になっているrinoさんにディレクターの方が作詞をお願いしてくださって。「何ものも表現したくない」という気持ちをすごく汲んでくださいました。私としては、歌詞を見てその思いが伝わっていたことがとてもうれしくかったです。何ものも表現していないはずなのに、物語性を含んだ、豊かな曲になっているんです。それから、rinoさんはいつも仮歌をご自身で歌ってくださって、私はいつもそれが楽しみなんです。今回も、聞くことができたのですごく幸せでした。

――5曲目は「空のアルカナ」。

 これが6曲の中で一番ぽやんとしている曲だと思います。私がレコーディングのとき、さらにぽつりぽつりと言葉を置くように歌ったので、もともとあった曲以上にゆったりした曲になりました。でも、置くように歌うことで作品の世界に入り込めましたし、根底に流れる柔らかく穏やかなものに身を浸す喜びが感じられた曲でもありました。

――最後は「月明かりのカノン」。

 曲自体はかなり早くからできあがっていました。当時、ディレクターの方に、「毎日が楽しいことだけではない。でもそんな日々を生きてきて、眠る前に、明日も一日頑張るぞと思えるような曲をやりたい。でも、押しつけはしたくないんです」とお伝えした、そのままがほぼ曲になっています。いい日も悪い日もあるとか、悪い日があったとしても強くあらがうでもなく受け入れて、しんどければ受け流して、少しでも明るい気持ちになればいいなという思いが反映されています。

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April 18, 2020 at 05:30PM
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