出版不況に活字離れ、書店の閉店など、本を読む人が少なくなった印象が強い日本ですが、実は「読書量を増やしたい」と考えている人が6割もいるという調査結果が出ているのをご存知でしょうか。「本を読みたくない」わけでは決してないのです。そんな結果を裏付けるように今、「書籍要約サービス」が注目を集めています。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、そのサービスを展開する「フライヤー」の戦略・戦術を詳しく分析・紹介しています。
手軽さと質の両立
今号は、人気の書籍要約サービスを分析します。
● 株式会社フライヤー(本の要約サービス flierの開発・運営)
効率良くビジネスのヒントを身につけたい方をターゲットに「要約文章のクオリティーの高さへのこだわり」に支えられた、「すきま時間で知性を養える」等の強みで差別化しています。
要約をとおして、短時間で本に書かれている内容をインプットできるだけでなく、より深く読みたい自分に合う本探しにも活用できることが、支持されています。
■分析のポイント
出版不況や日本人(特に若者)の読書離れという言葉は、以前からよく耳にしますが、そのような状況の中で、本の要約を読むことができるフライヤーが成長を続けている理由について考えてみたいと思います。
まず、読書をとりまく状況について文化庁による調査結果を見てみますと
【平成30年度「国語に関する世論調査」の結果の概要より】
●1か月に大体何冊くらい本を読むかを尋ねた。
「読まない」が 47.3%、「1、2冊」が37.6%、「3、4冊」が8.6%,「5、6冊」と「7冊以上」がそれぞれ3.2%となっており、1冊以上読むと答えた人の割合が52.6%である。
過去の調査結果(平成20、25年度)と比較すると、余り変化は見られない。
●読書量は、以前に比べて減っているか、それとも、増えているかを尋ねた。
「読書量は減っている」が67.3%、「読書量はそれほど変わっていない」が24.3%、「読書量は増えている」が7.1%となっている。
過去の調査結果(平成20、25年度)と比較すると、「読書量は減っている」は増加傾向にある。
●今後、自分の読書量を増やしたいと思うかを尋ねた。
「そう思う」が28.0%、「ややそう思う」が32.4%で、両方を合わせた「そう思う(計)」は60.4%となっている。
一方、「そうは思わない」が15.5%、「余りそうは思わない」が23.4%で、これらを合わせた「そうは思わない(計)」は38.9%となっている。
過去の調査結果(平成25年度)と比較すると、「そう思う(計)」は6ポイント減少し、「そうは思わない(計)」は6ポイント増加している。特に「そう思う」は9ポイント減少している。
【平成25年度「国語に関する世論調査」の結果の概要より】
●「読書量は減っている」と回答した人(全体の65.1%)に、読書量が減っている理由を尋ねた。(選択肢の中から二つまで回答)
「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」の割合が51.3%と最も高い。次いで「視力などの健康上の理由」(34.4%)、「情報機器(携帯電話,スマートフォン、タブレット端末、パソコン、ゲーム機等)で時間が取られる」(26.3%)、「テレビの方が魅力的である」(21.8%)となっている。
過去の調査結果(平成20年度)と比較すると、「情報機器(携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、ゲーム機等)で時間が取られる」の割合が12ポイント高くなっている。
この調査結果では、多くの方の読書量が減っていることが明らかになっていますが、6割の方は読書量を増やしたいと思っているということです。読書量を増やしたいのに、減っていってしまう、本を読みたいけど、読めないという状況に陥っている方が多いということでしょう。本を読むことの大切さをわかっている方の中には、本を読めていないことに罪悪感のようなものを感じている方もいるかもしれませんね。
なぜ、こうなってしまうかというと、読書量が減っている理由で最も多かった「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」ということが表しているように、現代の日本人はとにかく忙しく、本を読む時間がとれないということです。さらに3番目の理由である「情報機器で時間がとられる」が示しているように、本よりも手軽で魅力的なコンテンツが世の中に溢れているということです。やはり読書のネックとなるのが、時間がかかるということ、そして、それなりにパワーが必要(本を手に取って読むという行動が面倒)であることだと思います。
この読書のネックを解消しているのが「フライヤー」の要約サービスというわけです。
1冊10分程度で効率良く本の情報を吸収できるというのは本を読みたくても時間が取れない方にとっては、非常に魅力的だと思いますし、10分で読めるという手軽さは、読書のハードルを大きく下げると思います。
そして、このサービスで重要になるのが、要約の質です。10分で読めても、読者の中に何も残らなければ意味がないですからね。費用対効果ももちろんですが、より重要なのは時間対効果のように思います。10分間で、どのようなリターンがあるのか、ここが肝になるサービスだからこそ、要約の質が重要になるのです。要約とは、著者の主張や論理(重要ポイントや全体像)を忠実にまとめることですが、まさに言うは易く行うは難しで実際に本を要約しようとしても難しいと思います。
フライヤーは自社の編集部員に加えて、経験豊富な外部ライター約50人(数々のヒット作を手掛けたライターや、出版社の元編集者、新聞記者、経営コンサルタント、歴史研究家など)という、各分野の専門知識を有する執筆陣が、質の高い要約文を作成します。その文章を社内で、2人以上の出版編集経験者が、書籍1冊を精読した上で、推敲を重ねます。さらに、著者および出版社の担当編集者が、内容の整合性を最終確認した上で記事を公開しているのです。質にこだわっているのが、実際の行動から伝わってきますね。
ポイントとなるのが、著者と出版社が認める内容になっているということです。要約文章の公開は、書評と異なり、著者と出版社の許諾が必要となりますが、フライヤーの要約は、著者が本で伝えたいこと、著者の主張がしっかりと反映されているということを著者と出版社が保証しているようなもの、ということです。上記のように手軽さと質という、両立することが難しいことを実現しているからこそ、フライヤーが成長していると言えるでしょう。
また、フライヤーが成長することで、出版業界も恩恵を受けることになります。なぜなら、要約を読んだ人の15~20%が本の購入を検討しているからです。フライヤーのユーザーが増えれば増えるほど、本の売れる確率が高まるということですね。
読書離れが進む世の中で、フライヤーが、今後どのような存在になっていくのか注目していきたいです。
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July 26, 2020 at 07:16AM
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