■「共感する部分」には線を引くな
目指すキャリアを手に入れることにつながる読書とは、自分が読むべき本を「見極め」「読んで吸収し」「使える形に落とし込む」ことです。話題のビジネス書を100冊読むより、読むべき専門分野のビジネス書を30冊読むほうが、周囲に差をつけられると断言できます。
その実現のために私がお勧めするのは、次の5つのステップです。
①必要なスキルを把握する
思い描く将来に必要なスキルを把握するには、その道で成功している人の経歴を参考にするのが先決です。今ならビジネス専用のSNS「Linkedln(リンクトイン)」を活用するとよいでしょう。ユーザーが自分の学歴や専門、経歴を公開しているため、自分が理想とするキャリアを構築している人たちの経歴とその共通項が一目瞭然です。そうしたキャリアの「見える化」を通じて、例えば自分が目指したい仕事の肝はマーケティングだった、という具合に必須のスキルが見えてきます。
②その道のトップに、読むべき本を聞く
次に、自分の目指す道のトップクラスの人とコンタクトをとります。Linkedln経由、あるいは講演会に参加して声をかけてもいいでしょう。その方を師匠と仰ぎ、今まで読んできた本を教えてもらうのです。
教えてもらうのは、師匠が学んだ本と、師匠が尊敬する人の本です。どの業界でも、成功する人は同じ本を読んでいます。その多くはベストセラーというよりも、地味ながら師匠から弟子へ長年にわたって伝えられ、重版され続けている定番書です。
自分で良書を探す際の基準もお伝えしておきましょう。大原則は著者で選ぶこと。経営者ならサラリーマン社長ではなく、創業者と中興の祖のほうが名著に当たる確率が高い。鉄則は、そこに「結果」ではなく「原因」が書かれていることです。話題になる本の中身は、多くが著者の成功体験ですが、成功したという結果ではなく、成功した原因(理由)、真似できることについての情報がなければ意味がありません。
書店で平積みされている流行りの著者の本の多くは、著者自身に人気があり、多くのファンがいたから成功したケースが多い。普通のビジネスパーソンにとっては読んでも再現性がなく、勉強になりません。
③勧められた本はすべて読み、線を引く
読むべき本が見つかったら、必要と感じた箇所に赤線を引いていきます。線を引く価値があるのは、固有名詞、数詞、動詞、自分の事業にインパクトを与えそうな情報です。日本語は固有名詞の多くがカタカナか漢字だから、見つけやすくていい。
「自分の事業にインパクトを与えそうな情報」のピックアップには、会計の本を読んで勉強しておくことが必要です。これは業種を問いません。桜井久勝さんの『財務諸表分析』(中央経済社)が名著です。自分の会社や事業の損益計算書、貸借対照表のどの勘定科目にインパクトを与えたいのか、売り上げを上げたいのか、仕入れ値を安くしたいのか等々を意識して、何をすれば会社や業界、お客様が喜ぶのかを考えながら読めば、使える情報が手に入ります。
一方で線を引いてはいけないのは、実は「自分が共感する部分」です。あなたの自尊心は満たされても、そこに学びはありません。結果が出ない人というのは、自分の意見を肯定されることを好みます。「肯定されたい欲」には中毒性があって、似たような本を繰り返し読んでしまうので情報量が増えません。これに打ち勝つためには、「これから出会う情報のほうがもっと好きになる情報かもしれない」という感覚を持って、新しい考え方やノウハウを受け入れることです。「読んだときに多少嫌悪感があっても、なぜか気になる一文」にこそ、線を引くべきです。
④師匠とセンスをすり合わせる
師匠から勧められた本を読み終えたら必ず、自分が線を引いた箇所と、師匠がいいと感じている箇所が同じかどうか、すり合わせてください。違ったらもう1度読み直し、わからなければ師匠に教えてもらいます。このとき、わかったようなふりをして話を合わせるのは厳禁。必ず腑に落ちるまで教えを乞います。
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