全国の書店員さんが一押し本を紹介する連載「わが店のイチオシ本」。
第38回は、大阪府羽曳野市のマザー・ブックスの書籍担当・西山香里さんにご登場いただきました。
新しい世界を開いてくれた岩波少年文庫との出会い
私は大阪府羽曳野市、マザー・ブックスの西山香里です。皆さんご存じのように、羽曳野市は、たくさんの古墳に囲まれたのどかな街です。
今日は、私の大好きな本のお話をさせていただきます。
小学生の時、お稽古事の帰り道に初めて自分一人で買った本が岩波少年文庫でした。電車の中で夢中で読み、次の週もその次の週も、お稽古の帰りにその本屋さんに通いました。当時、岩波少年文庫は全て400円でしたので、割と手軽に購入出来たのです。
どれも期待を裏切ることなく面白く、家にあった世界童話文学全集を繰り返し読んでいた私にとって、この少年文庫との出会いは新しい世界が開けたような大きな喜びでした。たくさんの物語と出会い、中でも特に好きなのが『とぶ船』と『ムギと王さま』です。
▲旧版の『ムギと王さま』『とぶ船』
多くのきっかけを与えてくれた『とぶ船』
- とぶ船 上 新版
- 著者:ヒルダ・ヴィニフレェド・ルイス 石井桃子
- 発売日:2006年01月
- 発行所:岩波書店
- 価格:704円(税込)
- ISBNコード:9784001141368
『とぶ船』は、イギリスの田舎町に住む4人兄弟が魔法の船に出会い、時空を超えて冒険の旅をする心躍る物語。この物語は面白いだけでなく、多くのきっかけを与えてくれました。
エジプト、ロビンフッド、北欧神話、イギリスの歴史。のちにサトクリフの「ローマン・ブリテン」シリーズに夢中になったのも、この本が教えてくれたところが大きいでしょう。
特に好きなのが、4人兄弟の誓いの言葉。
「空気よ土よ火よ水よ、われらは誓うおごそかに、人にはもらさぬ何事も、空気よ土よ火よ水よ」
なんとも語呂がよくて素敵じゃありませんか。兄弟でこんな冒険ができたら、と憧れました。
心をわしづかみにされた「本の小部屋」『ムギと王さま』
- ムギと王さま
- 著者:エリナー・ファージョン 石井桃子
- 発売日:2001年05月
- 発行所:岩波書店
- 価格:792円(税込)
- ISBNコード:9784001140828
『ムギと王さま』は、ファージョンの短編童話集。昔話風のもの、寓話風のもの、現実的な子どもの暮らしを基にしたものなど、一口に童話といえど、多様で、飽きることがありません。
そして、石井桃子さんの、物語のツボをしっかり押さえた素晴らしい翻訳。お話にぴったりと寄り添ったアーディゾーニの挿絵。まさに宝物のような一冊です。
何といっても心をわしづかみにされたのが、作者まえがきの「本の小部屋」のくだりです。
もともとこの本の原題は『The Little Bookroom』なのです。うずたかく積まれた本を夢中で読み耽っている女の子、おそらく作者自身でしょう。彼女のように山のような本に囲まれて一日中「本の小部屋」で本が読めたら、どんなに素敵でしょう。
7年前にこのお店をオープンした時、どうしても作りたかったのが「本の小部屋」みたいな児童書コーナーでした。
お店に来る小さなお客様が、夢中になれる一冊をこのコーナーで見つけてもらえたら、本当に嬉しいです。
「本の小部屋」から、空想の翼を広げ、『とぶ船』に乗っていっぱい冒険をしてほしい。小さな人からお年寄りまで、お客様が心躍る一冊に出会えるお店になりたいと願っています。▲「本の小部屋」をイメージしたマザー・ブックスの児童書コーナー
◆作り手からのメッセージ◆
どちらも石井桃子さんが1950年代に最初の翻訳をした作品。そのおもしろさ、すてきさはピカイチで、今もちっとも古びていません。ファージョンの『The Little Bookroom』にはさまざまなタイプのお話が27編収められていますが、現在の少年文庫では『ムギと王さま 本の小べや1』『天国を出ていく 本の小べや2』の2冊ですべてお読みいただけます。(岩波書店 児童書編集部 愛宕裕子さんより)
マザー・ブックス(Tel.072-950-3337)
〒583-0853
大阪府羽曳野市栄町7-1
近鉄プラザ古市店4F
※営業時間 9:00~20:50
(「日販通信」2020年7月号「わが店のイチオシ本」より転載)
"本" - Google ニュース
July 10, 2020 at 10:01AM
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「本の小部屋」から空想の翼を広げてほしい:わが店のイチオシ本(vol.38 マザー・ブックス) - ほんのひきだし
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